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エキゾチックペットとは

犬や猫と
どこがちがうの?
エキゾチックペットのリアルな世界
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エキゾチックペットとは

犬や猫とどこがちがうの?
目次
最近よく聞く「エキゾチックペット」。一般に、家庭でペットとして飼われる、犬・猫以外の動物をこう呼び※1、動画配信サイトやS N Sで話題になることも多くなっています。「飼ってみたい動物」のランキングの上位にもハリネズミ、オウムやトカゲが名を連ねています※2。でも、エキゾチックペットの中でも野生動物は飼うことが難しく、時には逃げた動物の野生化による生態系への悪影響や絶滅危惧種の密猟や密輸など思いもよらない問題の原因となってしまうこともあります。

エキゾチックペットって
どんな動物?
犬や猫以外は、
みんな「エキゾチックペット」

「エキゾチックペット」というと、言葉のイメージから外国産の珍しい動物を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、ここでは「犬と猫以外のペット」を指す言葉として使います。「エキゾチックアニマル」とも呼ばれ、哺乳類、鳥類、爬虫類や両生類、さらに魚類、昆虫まで、さまざまな種類の生きものがペットとして飼育されています。

さらにエキゾチックペットは大きく「家畜化された動物」と「野生動物」に分けられます。前者は、モルモットやウサギのように長く人による飼育と繁殖・改良が行われている動物。後者は文字通り、捕獲された野生に暮らす動物と、飼育下で繁殖が行われているもののその歴史が浅く野生の性質を色濃く残している動物の両方を指しています。野生動物のペット飼育は、動物園でしか見ることができなかったような珍しい姿や生態を身近に感じられるのが魅力ですが、一方で特有の難しさもたくさんあります。

© Staffan Widstrand / WWF

家畜化された動物とは?

長年にわたって人に飼われ、交配と品種改良がおこなわれてきた動物のことです。ウシ、ブタ、犬、猫、マウス、ニワトリ、コイやカイコなど、こうした動物たちは人に繁殖や生活を管理されていて、元の野生種とは姿、形だけでなく、その生態や性格、病気や生活環境の変化への耐性も大きく異なります。こうした性質はたとえ野生種を飼育下で繁殖しても、短い年月で簡単に獲得できるものではありません。また、動物の習性や病気などの知識・情報量は、家畜化された動物と野生動物とでは比較になりません。

© Ofelia DE PABLO y Javier ZURITA

人が犬や猫と暮らし始めた歴史は先史時代にまで遡り、人と最も付き合いが長いとされる犬が飼育されるようになったのは、1万5千年~1万2千年ほど前と考えられています。しかし、その歴史の長さを比べると人が多くのエキゾチックペットと暮らしを始めたのは、最近といってもいいでしょう。比較的歴史の長いセキセイインコでも、200年も経っていません。

エキゾチックペット飼育の
ホントのところ
飼うのは簡単って聞いたんだけど…

写真投稿サイトや動画サイトでは、エキゾチックペットの投稿をよく見かけ、つい簡単に飼えそうに思えてしまいます。エキゾチックペットの販売店などでも、「ミーアキャットは犬や猫に比べて鳴き声も静かで、散歩もいらないから楽に飼える」などといった宣伝文句をよく耳にします。でも、それは本当でしょうか?

エキゾチックペットのなかには長年飼育下で交配され、人との暮らしに適するように変化したモルモットやウサギなどに加え、生態が十分にわかっていない多様な野生動物も含まれます。そうした野生動物では飼育のハードルが非常に高くなります。
ネット上には様々なエキゾチックペットに関する情報があふれていますが、動物を売りたいがため、アクセス数を稼ぎたいがためのいい加減な情報が多いのも事実。正しい情報を見極めるのに、かなり慎重になる必要があります。

エキゾチックペットが
病気になったら?

例えば健康管理。犬や猫なら、多くの病気に対し確立された予防法や治療法があり、病気になっても通常近くの獣医師に診てもらえます。しかし、エキゾチックペットの場合、特に珍しい野生動物は十分な知識を持った獣医師が近くにいるとは限りません。そうなると「病気になったが適切な治療を施せず苦しめてしまう」「動物病院が遠くて具合が悪くなってもすぐに診てもらえない」といった心配が出てきます。

エキゾチックペットは
人に馴れる?

エキゾチックペットは多種多様。数多く飼育されているハムスター、ウサギやセキセイインコなどは個体差はあるとは言え、愛情を注いで適切に飼えば人に馴れるでしょう。
しかし、家畜化されていない野生動物は、文字通り野生の気質をそのまま残しています。そこが魅力と考える人もいますが、「動物とのふれあい」はあまり期待できません(動物種や個体にもよります)。「トイレを覚えない」「威嚇する」「噛みつく」「騒音をたてる」など飼い主にとって好ましくない状況になってしまうかもしれません。さらに、大型になる動物や鋭い牙や爪を持つ動物は、成長して手に負えなくなることも…。こうした状況で困るのは飼い主だけではありません。家族や近隣への迷惑となり、トラブルになってしまうこともあります。

© Martin Harvey / WWF

もし飼えなくなったら?

さあこれからペットを飼おうというときに、ペットと離ればなれになる時のことを考える人はあまりいないかもしれません。でも、数年、数十年と生活を共にすることを考えると、決してないがしろにできません。

特に野生動物の場合は、長期の旅行や入院などの際に預け先がない、やむをえない理由で手放したいと思っても飼育環境を整える難しさなどを理由に引き取り手が見つからない、といった可能性が出てきます。

また、近年災害などの緊急時にペットの安全をどう確保するか、避難先などで他の被災者もいる中でどうやって生活を共にするかという問題が注目を集めています。エキゾチックペットの場合、避難先で十分な飼育環境が整えられなかったり、周囲の理解を得るのが難しかったりといった事態も起こりえます。

もし逃げ出したら?

ときどき大型のヘビやトカゲが逃げ出したニュースが話題になりますが、エキゾチックペットに限らず、不注意でペットが逃げ出すことは決して珍しくはありません。なかには毒があったり、危険な感染症の病原体を保有していたりする動物もいます。また、万が一飼っているペットが逃げて野生化し、農業への被害をもたらしたり、生態系へ悪影響を及ぼしたりしてしまったら…。さらに輸入された動物には、国境を超えて感染症を持ち込む危険性もあります。個人の興味で始めたペット飼育が、地域や国、さらには人類にとっての脅威となる恐れもあります。

エキゾチックペットと
私たちの幸せな関係のために

エキゾチックペットには、犬猫とは違う独特の魅力があります。ユニークな姿、興味深い生態、動物種によっては人に馴れない野生味も魅力の一つと考える人もいます。
しかし、エキゾチックペットと暮らすことは楽しいことばかりではありません。人生のパートナーとして知っておくべきこと、受け入れなければならないことがたくさんあります。ペットと幸せな関係を築くために、私たちに何ができるでしょうか?

続く章では、エキゾチックペットと私たちの関係についてさらに詳しく見ていきたいと思います。

ペットを飼う責任
  • 本サイトでは、犬・猫以外の愛玩動物・コンパニオンアニマルを総称して「エキゾチックペット」と呼んでいます。また、本サイトではエキゾチックペットはモルモットやウサギのような家畜化された動物(Domesticated animals)と野生動物(Wild animals)に大別します。野生動物には、野生に暮らす動物を捕獲した個体と、飼育下で繁殖が行われているもののその歴史が浅く野生の性質を色濃く残している個体の両方を含むものとしています。
  • Reducing Demand for Exotic Pets in Japan: Formative Research on Consumer Demand for Exotic Pets to Inform Social and Behavioral Change Initiatives